絲 の 想 い

あの頃は漠然と、でも強く惹かれていた理由を、いまなら理解できる気がする。20代の頃に度々訪れていたヨーロッパでの生活。それは、暮らしも仕事もちょうど良いスピード感だった。 窓を開けて　風を感じて　景色がきれいに見える穏やかな時の流れ。メーターはまだ先まであるけれど、敢えて踏み込みすぎない。日本では周りに合わせて踏み込んでいたアクセルも自然と緩くなる。そのスピード感が心地良かった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 “かごあみ”も同じ。早く早くと焦っても、植物が育つ早さは変わらない。それに抗うことなく寄り添い、分けて頂きながら自然を編む。こうやって心地の良い暮らしの速度を調整する。天然素材のかごはお手入れが必要だったり、用途が限定的だったり、万能ではなくて、手間もかかる。それでも、自分が作るかごは、どこか大切にしたい時間を作り出してくれる存在 ”slower” でありたいと思う。お使いになる皆さんに日々の暮らしの中で ”生きている今” を実感して頂けますように。 ／ 京都市生まれ育ち。 2017年 北海道北部の小さな町へ移住。 かごあみ絲として活動中。